蝶のような翅の生えた手のひら大の少女の姿をした妖精。非常に憶病で、滅多に人前に姿を現さない。捕まえようとしても人魂(ウィスプ)のような姿に化けて逃げ、いくら追いかけても捕まえることができないさまから、ミラージュ(蜃気楼)の名で知られている。
近年では飼育手法の革新とともに生産性が大きく改善され、燃料に頼らない新たな労働力の源として世界中で急速に注目を集めている。
赤紫色の彩釉テラコッタのミラージュ妖精
分類 | 霊体目 ウィスプ科 |
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名称 | ミラージュ妖精/Mirage Fairy |
全長 | 約16cm(爪先から頭頂部までの長さ) |
体重 | 0kg |
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ミラージュ妖精は、初めて人間に懐くときにその人間がそのとき考えているものを自身のモチーフとして永続的に持つようになる。モチーフの違いのことを市場では品種と呼んでいる。図の個体は、彼女を手懐けた研究者がそのとき懐に入れていた赤紫色の彩釉テラコッタをモチーフにしている。モチーフを得たミラージュ妖精は、モチーフをイメージした超能力を持つようになる。例えば、水の妖精であれば水を出現させる、火の妖精であれば物に着火する、などである。図の個体は、赤紫色の彩釉テラコッタの表面に描かれた矢印の模様のイメージを受け継ぎ、目の前の物体の表面に矢印のマークを出現させる超能力を得ている。
一度手懐けられたミラージュ妖精は、以後懐いた人間に対して無償で超能力を提供してくれるようになる。しかしながら超能力を行使するにはその重さに従って一定のエネルギーを使うようで、超能力を一度行使すると再びエネルギーがたまるまでの間は超能力が使えなくなってしまう。現在、ミラージュ妖精に外部からエネルギーを与え、補給に時間をかけることなく連続で超能力を行使させる研究が行われている。
ミラージュ妖精はジェスチャーや絵文字には明確に理解を示すものの、音声や文字による人間の言語を用いた意思疎通に成功した例はない。
代わりに、彼女らはテレパシーによって目の前の人間の考えていることを直接読むことができる。全く声を出さず、体を動かさなくとも、彼女らにやる気と能力があれば、実現したいことを考えるだけでやってもらうことができる。また、彼女らに対して悪意があるなしに関わらずなんらかの危害を加えそうになったとき、大抵は未然に避けることができる。これは本来野生動物から身を守るために身に着けた能力であると考えられている。
ミラージュ妖精は人間の走行よりも速く飛ぶことができる上に、ウィスプの姿になれば物体を通り抜けられるため、物理的に追い詰めるのは非常に困難である。その代わり彼女らは宝石類が大好物で、削って形を整えた宝石を差し出すと簡単に懐かせることができる。一度手懐けた妖精はその後滅多に逃げることはない。現在飼い慣らされているミラージュ妖精は、知られている中ではすべて贈り物によるもので、物理的に捕まえられた例はない。
背中に4枚の昆虫のような翅、頭に2本の触覚、後頭部に2本の触手が生えている。
翅は角の尖った三角形をしており、角付近は暗い色になっている。図の個体はすべての翅の色がほぼ同じであるが、その他の多くの品種では前後で色が異なる。翅の表裏での色の違いはない。ミラージュ妖精は翅を羽ばたいていない状態でも体重が計測不可能なほど小さいが、重力の影響は受けるようである。翅は重力に逆らって飛び上がり、その後飛行を制御するために使われていると考えられている。事実、翅を損傷したミラージュ妖精は正常な飛行ができなくなり、主に這って歩くことで移動するようになる。足は筋力が非常に弱く、そして体重がないため踏ん張りが利かず、人間のように直立二足歩行をすることはできない。
触角の働きはあまり解明されていないが、人間の心を読む能力と関連していると考えられている。触角を失った個体は、人間の指示を受け付けなくなることが多く、またそれによって危険を回避できず、ほどなく命を落とすことが多い。森の中でみかけるミラージュ妖精の死骸の多くは触角を欠いたものである。ミラージュ妖精は通常の生物が栄養にできる物質を含んでいないため、死骸が生物によって分解されることはない。死骸は風雨に晒されることで細かく表面積が大きくなり、徐々に蒸発して空気に混ざっていくと考えられている。